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  • 執筆者の写真眞蔵修平

たった10分で「失敗を恐れない子」にする方法。

うちのミュージカル教室に、失敗を恐れてしまう小学3年生の女の子がいました。少し難しいステップをやろうとしても、失敗を恐れてやろうとしません。

「みく(仮名)も一緒にやろうよ」と声をかけるのですが、「失敗したくないからいい」と教室の隅に行ってしまいます。心理的安全性は保たれている教室ですから、仮に失敗したとしても、彼女を笑ったり否定する人はどこにもいないはずです。

こんなとき、頑ななネガティブ感情を、周りからポジティブに切り替えようとしても、大体うまくいきません。「ん〜これは何かあるな」と思い、レッスン後に声をかけてみました。

私「みくはさぁ、何でそんなに失敗することが嫌なの?この教室でみくの失敗を笑う人は一人もいないし、否定する人もひとりもいないよ。」

みく「誰も笑わなくても、私の中で、私を否定する声が聞こえるんだよ。」

私「あ〜そういうことかぁ。じゃあさ、失敗を否定する声が聞こえるってことはさ、何かそういうキャラクターが、みくの中にいるって事だと思うんだよね。それってどんな奴なの?そのキャラクターの絵を一緒に描いてみない?」

さて、漫画家としての腕の見せ所です(笑)彼女に一つひとつヒアリングして、モンタージュ写真のように、うちの生徒を苦しめる憎き悪党を描いていきました。

みく「えっとねぇ、目が一つしかなくてね、すごく大きくてギョロッとしててね、充血しててね、真っ黒い体で、すごく大きな体で、ぶわ〜って私を襲ってくるの」

私「こんな感じ?」

みく「うん!そう!」

私「そっかぁ、こんな奴がみくの失敗を否定してくるのかぁ。これは怖いね〜。こんなやつが襲ってきたら大人でも怖いよ。じゃあさ、ギャグ絵ってわかる?今からこのキャラクターを可愛く描いてあげたいんだよね。」

ギャグ絵とは、スラムダンクの桜木が、流川にちょっかいを出すときに、ちっこくなるあの感じの絵のことです。漫画用語で「デフォルメ」といいます。

私「じゃあ、目が大きいんでしょ?目が大きいっていうのは、漫画のキャラクターとしてすごくいいことなんだよ。目が大きいからこそ、可愛くなるんだよね。少女漫画とかでも、すっごく目が大きかったりするでしょ?(絵を描きながら)この子にさ、例えばツケマツゲして、キラッキラに輝かせてあげたらさ、ちょっとは可愛くなると思わない?」

みく「wwwwww」

私「そんでさ、こいつさ、やっぱ背が高くて、大きいから怖いわけじゃん。だったら身長は5センチぐらいにしちゃおう。ちょっと弱くてダサい感じにしたいんだよね。ん〜あとは〜、このキャラクター、顔には目しかないから、表情が分かんないんだよね。だから口を描いて笑顔にしちゃう。で、あとは〜そうだなぁ。真っ黒だから怖いってのもあると思うな。この黒いのはさ〜やっぱり〜、ん〜、お風呂に入ってないからだと思うんだよね。シャワー浴びて、なんか綺麗にしちゃおうよ。どんな色だったら弱そうだと思う?」

みく「ピンク(笑)」

私「そっか。よしよし。じゃあシャワー浴びて、綺麗にしたらさ、血色良くなっちゃって、ピンク色の、目がキラッキラの、ちっちゃい奴が、チョコンとみくの横に座ってるんだよね。」

みく「wwwwww」

私「これから先ね、みくが失敗してさ、心の中でみくを否定するような言葉が出てきたとしても、こいつが言ってるんだと思えば、全然怖くなくない?」

みく「うん、全然怖くない(笑)」

私「よし!いいじゃん。じゃあ、どうせなら、かっこ悪い名前つけちゃおうよ。どんな名前がいいと思う?」

みく「『目でかで〜か』(笑)!」

私「いいじゃん(笑)面白いじゃん(笑)じゃあ今度からさ、みくが失敗して、何か否定されたって気持ちが出たら、『目でかで〜か』が出てきた〜!って思えばいいよ(笑)で、だんだん自分の中のイメージで、どんどんどんどんちっちゃくしていくんだよ。今こいつ5cmでしょ?4cm 3cm 2cm 1cmって感じで、どんどん小さくしていって、最後にはポンって消えちゃうの。そしたら、今みくが持ってる、『失敗するの怖い』っていう気持ちも、一緒にポンって消えちゃうと思うんだよね。どう?やってみようと思う?」

みく「(満面の笑みで)うん!」

私「よしっ!じゃあ、次回から失敗を恐れずに難しいステップもチャレンジしてみるんだよ。うまくいかなかったら、落ち込むんじゃなくて『目でかで〜か』が出てきた!って思うんだよ。そんでさ、最後の最後、ポンっていなくなっちゃったら、『今までありがとう。君がいたから成長できたよ』って笑顔で見送るんだよ。みくの中のさ、怖い存在だったけど、こうやって愛着を持って作り上げたキャラクターなんだから、最後まで、その『怖い』って感情自体も大切にして欲しいんだよね。

みく「(満面の笑みで)うん!わかった!」