前回、マズローの欲求5段階について解説しました。今回からはそれらをもとに数回に分けて、ご家庭での関わり方についてお話します。
ご家庭で以下のことを意識して、お子さんと関わっていただければ、ピアノの練習のみならず、勉強その他、努力が必要なものに関して、成果が出やすくなると思います。
ただ、これらはあくまで教室からの提案であり、ご家庭に強要するものではありません。もし、もっと詳しくこの領域について学びたければ、個別にご連絡ください。
モチベーションを壊さないことが一番大事。
一昔前のクラシック教育では、「一日練習をさぼれば、感覚が戻るまでに1週間かかる」ということがよく言われていました。この言葉は練習を強要するための呪いの言葉として、たくさんの子ども達を苦しめてきましたが、少なくとも子どもの音楽教育に限って言えば、当教室では明確に、これは嘘だと断言します。
もちろんプロのピアニストの世界では本当かもしれません。しかし、この言葉を発達途上の子ども達に投げかけるとどうなるでしょうか?本当に音楽を愛せる大人になるでしょうか?「勉強しなさい」と言われれば言われるほどに、勉強嫌いになっていくように、「練習しなさい」と言われれば言われるほど、人は練習を嫌いになっていきます。
練習を強要するのではなく、親子で一緒に音楽を楽しむ時間を増やしていくことを意識していただければ幸いです。
「褒める」「叱る」ではなく「勇気づけ」
巷では「褒める教育」が主流になって久しいですが、アドラー心理学では、子どもを褒めることも叱ることも、明確に否定しています。
褒めることも、叱ることも「能力のある人が能力がない人へ下す評価」とみなされているからです。
要は、親子関係が上下関係、支配関係になってしまうということですね。
そこで、アドラーは「勇気づけ」という言葉を使います。アドラー自身は勇気づけをしっかり定義はしていませんが、「相互信頼に基づいて困難を克服する活力を与えること」という文脈で使われることが多いようです。
褒めることと、勇気づけることの違いを見ていきましょう。
【褒める】 ・上下関係に基づいた評価
・何かを達成したときの声掛け(できれば〇、できなければ×)
・一方通行になりやすい
例)
「~できて偉い。」
「天才!」
【勇気づけ】
・対等な関係に基づいた共感
・達成しなくてもできる声掛け
・相互的なコミュニケーションに発展しやすい
例)
「結果は出なくてもちゃんと前に進んでいるよ。」
「あなたが楽しんでいる姿を見ると、私もうれしい」
「~してくれて助かる。」「ありがとう。」
とはいえ、褒めることや叱ることが100%ダメで、勇気づけが100%正しいと思う必要はありません。
褒めと勇気づけの区別がまだよくわからない方は、一旦はあまり深く考えず、「褒め言葉を増やす」ぐらいのつもりでもいいかと思います。
ただ「子どもとは人として対等である」という気持ちは大切にして下さい。
子どもとは対等な立場であるという前提で、ポジティブな声掛けを心がける。それが困難を克服する活力になれば尚良い。
それぐらいの気持ちでお子さんとかかわっていただけますと幸いです。
少し長くなりましたので、続きはまた次回。
<著者プロフィール>
眞蔵 修平(まくらしゅうへい)
代表取締役CEO / 教育プロデューサー / 学習環境デザイナー / メンタルコーチ / 平本式認定心理カウンセラー 【プロ】/ 教育漫画家
立命館大学理工学部卒業後、公立中学校に赴任。様々な教育問題に直面し、外側から教育現場を変えることを決意。2015年より、教育系企業と関わりながら、自身の創作活動やコーチングスキルを教育現場と結びつける活動を開始。
多様性を認め、誰も苦しまなくていい環境、誰もがのびのびと生きていける環境を、教育現場を超えて提案していきたい。詳細はコチラ。
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